『銀盤カレイドスコープ vol.7』海原零著 集英社刊


久しぶりにライトノベルも紹介してみようと思い至る。絵柄が恥ずかしいのは相変わらずだが、ライトノベルにありがちなベタベタの恋愛をやることなく、立派なスポーツ小説となっている。主人公である桜野タズサはフィギュアスケート女子シングルの世界において「BIG4」に数えられる実力者にして、その歯に衣着せぬ物言いから数々の舌禍事件を巻き起こしたヒール・スケーターでもある。その彼女に立ちふさがるは無敗の「BIG4」筆頭、ロシアの幼き女帝リア・ガーネット・ジュイティエフ、彼女がある日突然専属のコーチであったマイヤ・キーフラとの契約を解消することになる。そのニュースを聞いたタズサは迷わず契約を申し込む―


ロシアの地を訪れたタズサを待っていたのは、マイヤの壮絶な練習メニューと、露骨なまでの叱責だった。こんな環境でやっていられないと思いながら彼女は、女帝リアに勝つ為と、その練習に耐えていく、着実に練習を積み重ねていくなかで培われていく実力、今年こそは、そう思う彼女を寝耳に水の事件が襲う。


リアの男子シングル参戦―


彼女は既に私に愛想をつかしたのだろうか、ライバルとして認めていないのだろうか、プライベートではリアと仲良くしながら、氷上ではまるで眼中にもないかのような扱いにタズサは愕然とする。そして自分の今までの姿勢に1つの恐れを抱く、すべてに自信を持ってやってきた自分、しかしマイヤの元に来たのは、リアに勝つことができないことに対する言い訳ではなかったか、自分のアイデンティティを崩しかねないことに、タズサは激しく困惑する。


リアと勝負ができるのは今年だけ、そして最高の舞台である「バンクーバー五輪」、そしてタズサは敢然とリアに対して記者会見で敢然と宣戦布告することとなる。



作品が出た当初は、トリノ五輪に向けてフィギュアスケート界が華やかなりし頃、幽霊の取り付いた女子フィギュアスケーターという設定、その幽霊のアドバイスに助けられながら勝ち抜いていく、そして叶わぬ思い、というのは時勢にあっていてさらにライトノベルらしくてよかったわけですが、今は完璧にスポ魂してます。フィギュアスケートについて書かれた小説ってなかなかないと思うので、その意味でも非常に特徴的な作品であるといえるでしょう。一昔前、恋愛と不思議要素を絡めておけばまあよかったライトノベルとは隔世の感でありまして、プロの心理が結構よく表れているのではないでしょうか、自分プロじゃないからわかりませんけど。


実は昨日はもう1冊読んでたりします。レポートの課題で『日露戦争―もう一つの「物語」―』という作品、報道という観点から日露戦争を見た作品です、自分にとっては今後の職業としてもいい勉強になりました。従って昨日の昼からの24時間で3冊・・・半ぐらい消化したことになります。今は『司馬遼太郎の考えたこと2』を読んでいますのでこのままだと24時間で4冊に、これに加えて新聞を読んでいるわけですから、活字中毒です、正に。


こんなくだらない文章書いている前に午後の試験対策しないと、とうわけで寮を出る次第です。