『おおきく振りかぶって』ひぐちアサ著 講談社刊


卒論を提出し終えて始めに読んだ作品がこの漫画、いや久しぶりに野球漫画読んで面白いなと思った。どちらかといえば心理描写に重きをおいている作品で、部内の人間関係も野球中心で描かれているのが気に入りました。恋愛を導入するのは悪くないですが恋愛入れちゃっていつの間にか恋愛が主軸で野球おまけみたいな作品も多いんでその辺安心して読めます。野球読みたいのにパッとしない恋愛を見せられると萎えます、中途半端にスポーツを使うなと思ったりも。


確かに人間描く上で恋愛がないのは可笑しいですけどね、高校生はそういう時期ですから。


少し脱線、作品に戻ります。


物語は弱気な投手を皆で支えあいながら和気藹々と野球をやっていく感じでしょうか。真剣なはずなんですが何だかホンワカしててギスギスした場面を描いてもギスギスしてる雰囲気が伝わらないのはちょっともったいない気がします。ただ作者が野球好きなんだなというのが伝わってくる感じは好感が持てますね、しかしこんな楽しい部活だったら自分も入りたいなと思いました。


現在は6巻まで出ていますが前回の県優勝高である桐青と戦っています、ちなみに主人公達の高校は西浦です。西浦の野球部は新設で1年生しかいないはずなのになぜか桐青と互角に戦っています、それはないだろ!というのが正直なところですが漫画だから面白くていいか。いいテンポで試合が進んでいて心理戦の描き方も上手ですし、絵もうまいので単調になりがちな部分が退屈にならない辺りがベターです。


西浦の監督が女性で「百枝まりあ」というんですが120キロ投げるわバイト代全部野球部につぎ込むわちょっと変人なんですが、物語の中で野球部のこと考えてウズウズしたりしているところを見ると「こういう感覚っていいな」と思いました。生徒会とか塾祭とかやっている時そんな感覚を自分もよく覚えましたので、ウズウズする感覚がある時はぶっちゃけ他は何でもいいやという感覚がこの監督にはよく出ていて見ていると楽しいです。


西浦野球部を取り巻く人物達もなかなか魅力的で応援団を立ち上げた友達とか父兄とか、ただ皆良い人ばっかりですね。大概嫌な奴とか自分勝手な奴がいますがそういう人があんまり出てきません、だから安心して読める感じもしますけど。


本当にグタグタな書評ですが「野球が読みたい」「ホンワカしたい」という人にはオススメです。絵もあんまり癖がないですし、野球を知らない人でも巻末で丁寧な解説をしてくれているので良いかと。それと設定が細かくてそれが詳しく載っているのでそれを読むだけでも面白いです。西浦高校はこんな感じとか、部員の通学状況とか、読んでて面白いし物語への理解が深まります。欠点はやはり毒が足りないことか、それがいいといえばいいんですが。


試験が終わってからどうぞご一読ください。