『アンダーラップ』橋本紡著 野性時代12月号収録


表題「アンダーラップ」とは靴紐の結び方らしい、野性時代12月号「新境地短編」という特集の中に収録されている一編で、わずか9頁しかない。それでも橋本紡らしさがよく出ている作品ではないかと思う。


脚本家の卵である秀一とその恋人恵理の何気ない日常の一幕を恵理の視点で切り取った物語、20代後半から30代前半、ふわふわしていられる歳ではない、でも夢は見たい、しかれども現実は常に迫ってきて…そんな人間の割り切れない流転する気持ちを描いた秀作、唯一間違いないのは恵理が秀一といて幸せであるということ、大それた目標も無い展望も無い、けど幸せならそれでいいじゃない。


少し軽いけど、前向きな感じになれるいい作品です、バックナンバーでどうぞ。