『政治家やめます。』小林照幸著 毎日新聞社刊


これは以前から読みたかった1冊、政治家の自伝といえば虚飾やら建前やら含みやら、本音がないのが当たり前、しかし「向いていないので辞めます」といった人の本には、何かしら政治の正しい部分が出ているのではないかと思ったからである。


このノンフィクションの主人公を「久野統一郎」という、田中角栄内閣で大臣を務めた久野忠治という愛知県選出の代議士の息子、つまるところ「二世議員」である。道路公団の技官として50近くまで働いてきた統一郎は、自らの意志に反して父親の後を継ぐことになる。


何もわからぬまま入った政治の道、後援会員に怒鳴られながら政治家としての生活をこなしていく、普通の人の感覚をもってやってみよう、それが望まざる道を選んだ統一郎が自分に科した誓いだった、誓いの証は500円のネクタイである。


それでも政治は彼を飲み込む、金銭感覚は麻痺する、飛行機はすべてファーストクラス、新幹線はグリーン車、選挙の為に何千万と渡される餅代、普通の人の感覚は徐々に消え去る。人間関係も複雑になる、地元の市長選挙町長選挙での候補者調整、どちらも恩があるならば面従腹背覚悟で両方に愛想を振りまく、落ちた方にはほとぼろが冷めた頃に取引を持ちかける、しかしそれは政治の論理、支援者からは脅迫状のような手紙が届く。


自らの感覚の変化に戸惑う、息子に後を継いでほしいと思い、住民票を移そうとする娘に激怒する、妻もその気になっていく、自らの変化に戸惑う、そして自分がたいしたことがないのを知っているのに自分を「次は大臣だ」と持ち上げる支援者達、疲れ果てる―


統一郎は三期十年で議員生活に終止符を打つ、向かないから辞めます、は波紋を広げ、父の代から応援してきた支援者は激怒する。辞めてからも自由にならない生活にしながら、やがて時は立ち、あの騒ぎが嘘のように周りが静かになっていく。


一気に読みましたが、これ読んで政治家やりたいと思うのはよっぽど自信があるか、内容を理解できなかったかではないかな、と思います。俺も政治は向かないな、と正直思ったり、これからいろいろ経験していく上で考えていくしかないとは思うのですが、とにもかくにも政治は魔物です。


先ほど速報で新庄に自民党参議院選挙に出るよう打診したとか、まだそんなことやってるのか、とあきれずにはいられません、そんなんで投票するほど国民はアホではないと思うんですが、あげく竹中平蔵参議院議員を辞任するそうでこれはいいんですが、繰り上がりが女子プロレスラーの「神取忍」って・・・涙出てきた。