『なぜ記者は戦場に行くのか』吉岡逸夫著 現代人文社


やはり仕事に関するモノは読んでいかないとな、と思って読み始めた。ある意味一番知りたかった部分でもあるので図書館で見つけた時は渡りに船ということですぐに借りた。東京新聞の記者である吉岡氏がアフガニスタンでの取材の合間を縫って最前線の記者達を取材した記録だ、実際は映像集として中野で公開され、好評であったらしい。


「戦場」というのはジャーナリストを目指す人間からすると少し甘美なモノが漂うのは否定できない気がする、もちろんそんなもんに酔っても仕方がないのは重々承知、けれども命を引き換えにいってしまうのは何か酔っているのではないか、そう思わざるえない。


現場にいる人々はそんな「酔い」を多少は承知しつつも、俗にいわれる「使命感」「正義感」「ジャーナリスト魂」なんてものについては、あまり意識していないように見える。見たいから行く、仕事だから行く、そんな感じを記者達のインタビューから感じる、そんな無駄な感情は挫折の種になるだけ、そういう感覚のようだ。自分が感じたのは、少し戦場というものを自分は少し特殊視しすぎているかな、ということ。戦場は最近起こった新しいフィールドでもまた魑魅魍魎が蔓延る異界でも何でもなく、紛れもなく「人間」の世界であるということだ、人間の世界を取材するのに特殊な使命感や正義感、職業的使命なんか必要ない、ただそこに「ある」ということを伝える、また「ある」ことに興味がある。遥かにフットワークの軽い記者達の感覚を感じる、もちろん死は身近にあるが―


戦場に行くかなんてわからないし、骨を拾ってくれる人ができる前に戦場にいってくたばるなんざ真っ平ごめんなんですが、なぜ「現場」に行くのか、という感覚を勉強するには非常に役に立った1冊。印象的な言葉に「人間がいる場所には何かしら伝えることがある」という言葉がある、どれだけ干されてもくたばらずに自分のペースで書いてやりたいと思う。


しかし記者に独身が多いのは萎えますね―