『―容疑者―室井慎次』鑑賞す


「交渉人」に比べて何かと評判が悪かった「容疑者」でありますが、自分としてはいろいろと見る部分があったとは思います、といいますか自分はどんな駄作でも何かしらいい部分を見てしまうので、これは駄作だとか怒ることは少ないんですよね。よくわからんペラペラな「思い」のこもった作品には激怒しますが、「容疑者」はそれなりに作った人の「思い」があったと思います。


ほとんどしゃべらない主人公をよく主人公にして映画にしたな、ある意味それがマイナス評価にもなったのかもしれません。「交渉人」が娯楽作品として「踊る」を受け継いだとすれば、「容疑者」は「思想」という部分で踊るを受け継いだといえる感じがします。


人間が欲望というものに振り回される皮肉、真実を追うことによって身を滅ぼす現実、勇気は失われてしまうと取り替えが効かないと老弁護士が言います。人間は身を滅ぼす為の「勇気」を持ちながら、身を生かす為の「欲望」を持って生きています。けれども、映画の中では自らを追い詰める「真実を求める勇気」が、周囲の人々を引き付けていくことになります。


現実は簡単ではない、それでも一生で1つしか得ることができない「勇気」を持って生きていきたい、と思うのが人間ではないでしょうか。