『DDD(1)』奈須きのこ著 講談社刊


同人界で伝説となった同人作品『月姫』それに続く商業作品『Fate』のライターとして知る人ぞ知る奈須きのこ氏の作品。講談社からの作品は同人作品『空の境界』をリメイクして以来である。『空の境界』を友人から借りてまだ読み切っていない(ごめん)ので、今回の作品も読み切れるか不安があって購入するかどうか迷ったが結局購入することにした。


表題『DDD』は「Decoration・Disorder・Disconnection」の短縮形、意味は各々調べてください。内容は「悪魔憑き」と呼称される病が蔓延る現代社会、精神疾患の一種と分類されるが神経物質の異常が精神だけでなく肉体にも変化を表すのが特徴だ。つまり精神疾患を持ちつつ超能力者になると言えばいいのだろうか。そんな「悪魔憑き」による凶悪犯罪が横行している世界、物語はそんな世界で自らも悪魔憑きである石杖アリカと四肢が欠損している不思議な美少年迦遼カイエが織り成す不思議な「悪魔払い」の物語。


しつこい!と言いたくなる程に精緻に構築された理論、理解が追いつかなくなるつつも張り巡らされた複線を回収していく妙技、そういうことか!と驚くよりも、何でこんな作品書けるの!?、と怖気が走るような奇作、面白いという作品はあっても怖いと感じる作品はそうそうない。人間の様々な状況における精神分析もなるほどってぐらい当たっていて、いやはや恐ろしい作品である。


正直書評しようと思ったけど書評出来ない(笑)推理小説とか好きだと読んでみるといいかも、描写がすごく精緻なのでスプラッターなのが苦手な人はやめたほうがいいかも。しかし奈須って人は本当に「壊れてるけど魅力的な人」というのを書くのがうまい。どこからこんなネタが浮かんできて構築できるのか、本当に聞いてみたいというのがこの作品を読んだ時の素直な感想だった。