苦離巣魔酢と一片の悲しみ


齢22歳を数え独り身にて、阿呆にも程があるが万難を排して寮の苦離巣魔酢の伝統行事「シネシネ飲み」の幹事を務めることとなった。来年からはただでさえ忙しく過酷になろうというのに未だ独り身とは万死に値する、しかし泣き言は何も生まない、前向きに企画を推進することとする。


だけど悲しくて少し泣く、とりあえず先輩として後輩の為の最期の奉公ということでケーキを購入してたった今帰宅した次第、仕方ないやるっきゃない頑張るっきゃない(笑)


そんな心情に苦しみつつも読書は相変わらずで野村美月著『文学少女と繋がれた愚者』武者小路実篤著『友情』を読破、続けて芥川龍之介著『戯作三昧・一塊の土』宮城谷昌光著『重耳』を読んでいる。


文学少女…』は本が実際に食べてしまうくらい好きな遠子先輩とその後輩である井上心葉を中心に描く文学ミステリー作品、主人公の心葉のウジウジした感じはどうも好きになれないけど、遠子先輩のぶっとびっぷりと文学マメ知識は十分面白い、今回は心葉の友人である芥川を巡る物語、好男子である芥川君が繰り広げる惨劇、そして更科という芥川君の彼女、2人を繋ぐ鹿又という少女の存在、張り巡らされた複線を回収していく流れは前作2冊に比べキレが増している感じ。


『友情』は『文学少女…』で使用されていて面白そうだったので、すぐさま買って読んでみた作品。主人公の野島は友人の妹である杉子に一目惚れ、その杉子の素晴らしさを親友の大宮に日々語って聞かせ妄想とも言える思いを募らせる。しかし実際に杉子が恋をしていたのは大宮だった、大宮は杉子の思いを野島を思って断り続け最期にはパリに留学してしまう。しかし杉子から来る止めどない手紙に、正直杉子が昔から好きだったと白状し、杉子はそれを喜んでパリに向かう。大宮は野島に親友として正直である為ある文学雑誌に杉子との往復書簡を公開する。衝撃を受けた野島は一頻り泣いた後こう叫ぶ。


「自分は淋しさにやっとたえてきた。今後なおも耐えなければならないのか、全くの一人で。神よ助け給え」


うーん寂しい、さぶイボでそう(笑)でもやっぱり『愛と死』と並んで名作と呼ばれるだけありますよ、薄いですし読みやすいからオススメします。たまには名作としゃれこむのもいいんじゃないですか。


『重耳』と『戯作三昧・一塊の土』はまた書評する予定、では皆さんクリスマスをお楽しみください。