『沙中の回廊(上)』宮城谷昌光著 講談社刊


生死を無意味にしない為に人は何をすべきか、勇気の本質とは何か。


春秋時代中期、後に無類の兵法家といわれる「士会」は、若き日に戦場を駆けながらそのような疑問を呈し続ける。物語は春秋五覇の1人である「文公」の即位間もない頃から始まる。司法官の家である士家に次子として生まれた士会は、異端視されながらも武術に打ち込む、戦乱の世で身を立てていくには文だけではなく武も必要である、文は兄に任せておけばよい、そう士会は考えていた。


士会が武に走ったのは自らの性分もあるが、没落した士家を復興するには武の方が有効であるとも思ったからだ。事実として晋は続々と戦乱に襲われ、士会はその武勇から文公の車右に命ぜられた。車右とは、当時の戦車に三人で乗り長を補佐する人物のことで、後の1人は騎馬の御者である。君主の車右に命ぜられたということは、晋一の勇者と認められたも同様である。士会に道が開けてくる、同時に士家も興隆する。


戦場を駆けていく中で士会は己の武勇だけでなく、戦の大勢を見る戦略眼を養っていく、既に大国となった晋、ただ士会が宰相となるまでは今少し紆余曲折がある。


『沙中の回廊』というネーミングが気に入ってますね、士会という人間についてはまだまだわかりませんが、下巻に期待していきたいと思います。