『The MANZAI 1』あさのあつこ著 ピュアフル文庫刊


有名作品『バッテリー』に背を向けて、今度はこちらに手を出しました、面白かった、いやはややっぱり青春っていいもんだ。物語の流れとしては、クラスのヒーローである秋本から突然「つきあってくれ」と告白された転校生の瀬田は薔薇の世界を想像して慌てるが、秋本の「つきあってくれ」とは漫才につきあってくれ、という意味であったのだ。瀬田を見た秋本はぴーんときたらしい。


2人の初演は文化祭の演劇「ロミオとジュリエット」だ、ただ古典劇をやるのではつまらないので漫才でやろうということになったのだ。自分の不登校が原因で父と姉を亡くし、転校する破目になった瀬田は、クラスメイトたちの「フツウではない」という自らに対する表現に激しい嫌悪を抱く。それでも秋本の強引さに連れられて、ロミオとジュリエットでジュリエットを演じることとなる。


「漫才ロミオとジュリエット」は、様々なところから圧力を受ける。体面を気にする校長や教頭は「中学生らしい劇」を求める、国語教師は古典劇らしい崇高さ求める、大人達の型に嵌めようとする嫌らしさは、『ガールズ・ブルー』で描かれたものと一緒だ。担任の頑張りで演劇はなんとか日の目を見ることができたのではあるが。


生徒会にいた自分は、こういう教師側の介入がどうにも気になる。仕方ないのだろうけど、中学生らしさを求める傾向はやっぱりあった、型に嵌めてはいけないと思うけど、放任と自由は違う、大人に近くなっているから、ただ先生を怒るだけではどうしようもない気がする。できれば文化祭ぐらいは好きなようにやらせてあげたい、そんな風に感じる。