追いつかず


書評が追いつかない、というかへたっぴな書評なので追いつかなくてもいいのだが、自分としてもとりあえず書評を目的としてこの文章を書いているので、最近読んだ本を書いておかねばなるまい。


まず南木佳士の『急な青空』で、『冬の水練』と同じくエッセイ集、前者の方が重い気がする日々の何気ないことへ向ける視線は気がつかされることも多くいいのだが、どうも重くて、精神的に安定してる時に読んでください。いや本当に(笑)南木佳士は精神的に太い時に読むべきだ。


続いて一転名作へ、夏目漱石の『倫敦塔・幻影の盾』で、最近やたらロンドンに行ってみたいと思っている自分には楽しんで読める作品だった。漱石の時代から百年経つが、それでもロンドンの風景は大きく変わるまい、表題作である「倫敦塔(ロンドン塔)」では、血塗られた歴史を持つこの塔を訪れた漱石が、幻想とも何ともわからぬ映像を見るのだが、そういうものが見える、感じさせる風景に立ち会ってみたいものだと思った。最近の日本の城はどうも観光地化し過ぎて、どうもそういう霊的な力を感じない。


そして南木佳士の『海へ』で、秋田大学時代、休日を使って海を訪れた著者の自伝的小説、本当に自伝のようでウツに陥った過程が妙に克明に描かれている。自伝的作品で、ここまで共感が得られる作品は少ない。


と、こんなところでしょうか、ライトノベルも含めればストックはもっとあるのだが、今回はこれぐらいにしておこうかと思う次第。