『狼と香辛料2』支倉凍砂著 電撃文庫刊


すっかり嵌まってしまった行商人ロレンスとホロのお話、電撃小説大賞銀賞受賞作、現役の大学生(物理学科)ということでなんだか負けてられん気がする。物理学科に行けてこんな文章が書けるとは天は二物を与えるよな、とブツブツ文句も言いたくなる。


2人は銀相場を利用した騒動に巻き込まれ危うく命を落としかけるが、ホロの助けやロレンスの勇気もあってかなんとか切り抜け利益を手にする。その利益を胡椒に変えて北を目指す、北はホロの故郷である。胡椒に変えるというのは少し歴史をやったことがある人ならわかるとおり香辛料が非常に稀少で高価だったからである、少ない量で高価というならば持ち運びにはもってこいというわけだ。そんな胡椒の袋は、移動の際はホロの睡眠用枕となってしまっている。


胡椒を捌いて利益を得ようとした際に、相手の商人が天秤に細工をしていることにホロが気がついて、ロレンスは相手商人を畳み掛けさらに大きな利益を得る。しかし現金でなく代金として掴まされた武器は、相場が大暴落しているいわくつきのもので、途端ロレンスは破産の憂き目にある。わずか2日で莫大な稼ぎを得なければ鉱山に送られるか航海船に乗せられるか、運命の2日間が幕を開けるのである。


物語の中に用いられる商業的な知識は確かに誰でも理解できるが、物語に取り入れている取り入れ方が非常にうまい、これを商学部がやるなら驚かないが、理系の方がやるのだから脱帽である。そして少しずつ近くなるロレンスとホロの距離、これは今日に『狼と香辛料3』を買いにいくしかない気がする。


シゴフミ』っていう雨宮諒の作品も読んだんですが、どうも『死神のバラッド』と被って書評する気分にはなれませんでした。死者からのメッセージっていうテーマは使い古されているので、どうも突飛な設定があるか、よほどしっかり描かないと難しい気がします。前作の『夏月の海に囁く呪文』が良かったのでどうも残念、次回作に期待する次第。