『日本のいちばん長い日』半藤一利著 文芸春秋刊


先日紹介はしたことはしたのだが、詳しい内容は書いたことがなかったのでここに記しておきたいと思う。


ここでいう「いちばん長い日」とは終戦の日である8月15日の正午に至るまでの24時間のことである。終戦に至るまでの流れが語られた後、1時間ごとにに昭和天皇玉音放送までに起こった事が緊迫感ある物語としてまとめられている。


近衛師団の反乱や最後の御聖断は有名なので詳しくは語らないが、玉音放送を記録した玉音盤を巡る動きは面白い。なかでも録音中の技師の悩みは当時の人々の考えがよく表れている。悩みとは「天皇の声をテストして不敬ではないのか」「取り直しをお願いして不敬ではないのか」ということである、今にすれば何を馬鹿な、という感じではあるが、そういう時代なのだ。天皇は人ではなく、神である。


深夜の玉音盤を巡る攻防、宮中を捜索する近衛師団天皇と連絡を取ろうとする侍従達、暗殺の手を逃れ身を隠す首相、反乱の牙を剥かんとする基地司令、最後の酒をん部下と酌み交わす陸相―極限状態の中で人々の思いが鋭く交錯する、帝国日本が鮮やかに、そして醜く表れて消えていく。


玉音に至るまでの日本人が如何に絶望し、如何に未来を描いたか、その姿をぜひ確認してほしいと思う。