塩野七生著『コンスタンティノープルの陥落』


ちょっと雰囲気を変えて歴史物を・・・


コンスタンティノープル陥落=1453年:ビザンチン帝国滅亡という構図がすぐに成り立つ人は世界史をやった人でしょう、世界史上の大事件の一つです。


コンスタンティノープルは、現在のトルコの首都イスタンブールのことであることを知っている人は多いと思います。その歴史は古く、ローマ時代ビザンチウムと呼ばれ、コンスタンティヌス大帝の治世の元で「コンスタンティノポリス」と名を変えます。ちなみに英語読みがコンスタンティノープルなんですね。


ヨーロッパの人々は、やはり「ローマ」を源流として感じるわけで、そのローマの流れを脈々と受け継いだヨーロッパの母胎ともいえるビザンチン帝国の都コンスタンティノープルの陥落は一代事件なわけです。


物語はコンスタンティノープル攻防の最中の多くの人物の行動を通して描かれます。守備側はヴェネチアから派遣されてきた提督、医師、ジェノヴァ傭兵隊長キリスト教会の枢機卿ビザンチン皇帝コンスタンティヌス11世、その側近、攻城側は、国王メフトフ2世、その小姓、セルビアから派遣されてきた援軍の騎士・・・比較的守備側に重点が置かれて描かれています。


物語は、コンスタンティノープル攻防前夜、城攻めの開始、守備側の善戦、有名なトルコ艦隊の金角湾に向かっての山越え、守備側に広がる動揺、総攻撃、城壁守備の崩壊、混乱する市外、その後・・・と続いていきます。


様々な人物から描かれるので話が飛んで掴み辛いという感じもしますが、そのかわり250ページ程度にまとまっているので負担なく読めます。個人的には千年の都の陥落、という雰囲気や歌い文句にロマンを感じて読み進めたわけですが、どちらかというと記録的な感じを受けました、わざと感動を煽るよりいいですけど。世界史で習ったたった一行のことにこれだけの物語が詰まっているのかと感じるのに良い一冊です。


またこの都の陥落は、中世の終わりを示す戦いでもあります。中世的騎士に代わり、歩兵や砲兵による集団戦が前面に出て、アーサー王や、シャルルマーニュ等の騎士道物語というものの終わりを感じます。


この作品は三部作で『ロードス島攻防記』『レパントの海戦』と続いていきますのでその読書感想はまた後日・・・