城山三郎著『賢人たちの世』


今日,田舎から父が来ました、しかしご生憎の体調不良、というか疲労、思ったよりバイトの疲れがきているのか、どうもキレが良くない、喫茶店でモーニングを一緒したぐらいで別れた、悪いことをしたと思う。


さあ、杖の練習に行かないと・・・確実に遅れます、書評書くし。月曜セミナーの話し合いで行けなかったからなあ・・・


というわけで城山三郎著『賢人たちの世』である。


題名だけではさっぱりよくわからないが、ここでいう賢人とは自民党の政治家だった前尾繁三郎灘尾弘吉椎名悦三郎の三人を指す。なぜ賢人と呼ばれたかははっきりとしないが、よく三人で集まって様々なことを語らいあっていたのを、当時党内の有力者であった人達の集まりということで注目され、『三賢人の会』とどこからともなく呼んだのが始まりであったらしい。


そこまで有名な人物ではないが、当時の政界では派閥の領袖であったり、党三役であったりと重要な位置を占めていた三人である。その三人の特徴はおおよそ政治家らしくない政治家であるということだ。当時の政治家といえば権力奪取の為、権謀術数いとわず、刑務所の塀を歩くように政治資金を集め、子分を養う、利益誘導、ポストの為に容赦なく実弾(お金)を飛ばしあう。


そんな中でこの三人はまっとうな、清廉潔白な政治を求め、政治浄化に力を注いだ。元々三人とも官僚出身である為政治家らしくなく、地元への利益誘導は皆無、演説もへたくそ、お金集めもしない、権力を欲しない、選挙はぎりぎりでの当選も多く、派閥の利益を考えない為に子分から突き上げをくらう。筋を通すことを好み、時にそれで自らを窮地に陥れたりもする。しかし、三人は人望に支えられて、党内で重要な地位を占めた。三人とも官僚出身であるのに、政治家より真っ当な政治家らしかった。能力も十分、ただ権力に対する欲がなかったので表にはあまり出てこなかった。そういう姿勢をもって賢人と呼んだ。


特に椎名悦三郎田中角栄の後の総理を『椎名裁定』で三木武夫と決めたことが有名であるし、有名な発言もある。


日韓基本条約締結で野党が「侵略について反省しているとはどういうことか?」と問われて椎名は「しみじみと反省しているということでございます」と答えたり、アメリカについて「アメリカは日本の番犬でございます」と言って、野党に批判されると「番犬様でございます」と言ったり、ちょっとした失言だがしごく真っ当な理由を述べるので誰も反論ができない。外務大臣の時の発言だが、椎名はこのような発言にも関らず名外務大臣として讃えられている。


このような国を憂う「国士」のような官僚出身政治家であれば決して政治家になるのも悪くはない、そう思える一冊でした。